藤内遺跡出土品の修復についての一般質問

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富士見の坂土遺跡出土の土偶が重文指定になったことで沸いておりますが、3月議会で重文指定なった場合の文化庁が推奨する修復方法に問題があるとの一般質問を行いました。

・藤内遺跡出土品重文指定の追加指定について

①平成24年に購入した藤内遺跡出土品の重要文化財追加指定の進捗状況は。

町長・・・平成24年度購入した出土品は231点、そのうち29点は重要文化財候補として申請のデータを作成中。

②重要文化財指定にあたり改めて修復が必要とのことだが、費用はどのくらいかかるのか。

町長・・・すでに重要文化財に指定された出土品が199点。その中で修復が緊急だと思われるものは24点あり、国の補助を頂き修復の予定。総額は2500万円程度かかるが27年度は国の予算が流れ、28年度に再申請の予定。

③文化庁指定の修復方法に問題があるとの意見もあるが、どのように考えるか。

町長・・・文化庁指定の修復方法は綿密に指定されているので、これを逸脱して修復するつもりはない。他の市町村でも同様だと聞いている。

④重要文化財指定後、どのように活用していくか。

担当課・・・藤内遺跡の特別展、講演会などを開催し、広く国内外に藤内遺跡の貴重性をPRし文化財に対する郷土愛の醸成を図っていく。土器の複製品(レプリカ)もつくり、公共施設や宿泊施設に置いて町民や観光客に、より縄文土器が富士見町にあること、また身近に感じられるような事業を展開していく。また学校教育にも活用していく。

⑤重要文化財指定にあたり、考古館の老朽化をどのように考えるか。

町長・・・耐震性は確保されている。ただし一部の棚、収蔵庫について弱いところがあるので、これを直すことを計画中。

富士見町は、平成24年に個人所有の藤内遺跡出土の土器・石器231点を1500万円で購入しました。
購入にあたり議会へも重文指定の可能性があるとの説明がありましたが、個人所有から町のものになったということで、改めて重文指定の話が持ち上がっているようです。そこで土器の修復の話がではじめたのですが、この修復方法に問題があると指摘する人がいるので今回一般質問として取り上げました。

修復方法の問題というのは、継ぎ目などを樹脂で固めてまわりをコーティングしてしまうので、継ぎ目も見えなくなり土器の風合いも無くなってしまう。壊れてもいないのにバラして頑丈にするために修復し直すとのことです。
とりあえず県内県外の博物館に片っ端から行ってみました。
井戸尻の研究は、土器の文様から縄文時代の精神世界を読み解くことを重要視しています。
もし本当なら大変なことです。

継ぎ目もなく色合いも統一してしまった土器は、ひとうひとつの個性がなくなってしまっているように思いました。ある博物館ではパンフレットや絵葉書に、修復前のものを使っているので違いは一目でわかります。
ところで最近の考古博物館では、雰囲気ばかりを大事にして暗すぎるように思います。藤森栄一さんは土器や土偶は考古資料なのだから美術品のような展示方法ではなく、学問的な陳列方法にするべきだと語っています。
考古資料ではなく美術工芸品としての縄文土器との考えから、こうした修復方法になってしまうのかもしれませんね。

修復の問題を指摘し、再度質問。
担当課の回答です。

文化庁が進める修復方法は、地震などの災害、事故に遭遇したときに、できるだけ良い状態を保てるように修復することだが、町の石膏やセメダインを用いた復元方法は、劣化するため文化庁では認めていない。
この修復方法は20年前より行われており、ほとんどの市町村で実施されている。
ただし、考古館、修復業者と協議の上原型に近い修復をしていく。

修復業者と話をする機会があったので、いろいろ聞いてみたところ、現在は石膏の代わりにエポキシ樹脂、セメダインの代わりにアクリル樹脂を使ってコーティングしているとのこと。石膏は全く問題がないがセメダインは劣化して接着面が収縮するため外れることがあるそうです。(だったらセメダインの粘着力が落ちたところで、その都度セメダインで接着し直せば良いのでは…)

継ぎ目を残すような修復方法は、技術的には可能だが国庫補助を受けての事業なので文化庁が、それで良しとするかはわからない。(修復は国50% 町50%の事業です)

井戸尻の復元は初期の考古館長武藤雄六氏によるものですが、武藤氏の復元方法の強度は定評があり、本人に話を聞いたところ石膏の作り方にコツがあるそうです。

現状壊れてもいないし、頑丈に出来ているのにもかかわらず、なぜ修復をしなければいけないのでしょうか。
ちょっと調べてみました。

文化財保護法には、文化財を保護するために建物をきちんとしなさいとか、きちんと学芸員を置きなさいとか文化財を保護する背景については書かれていますが、文化財をどのように修復しろとまでは書かれていません。そして埋蔵文化財について文化庁は、平成9年に出された「出土品の取り扱いについて」を参照しろとしていますが、こちらにも明文化されたものはありません。

文化庁の言うとうりに修復しなければいけないという事でもないようです。

技術的なことを素人同士で討論しても仕方がないので(記録に残すために討論はしました)、次世代に残すべきは井戸尻の学問としての精神。美術工芸品にして重要文化財にするよりも井戸尻の精神を大切にするべきではないかとの質問をしました。

以前、前館長の小林公明氏から「常に良いものだけ見ていれば良い。そうすれば違うものを見たときに”あれっ”と気づく。その気づきが大切なんだ」と教えてくれました。似たようなことを小林秀雄の本で読んだことがあるような気がします。
藤森栄一氏は、恩師三澤勝衛氏から「頭で考えるな。見て触って考えろ」とよく言われたと著書に書いてあります。
井戸考古学は、この流れを汲み土器の文様を読み解き縄文人の精神世界を読みとくという、他地域の考古学とは違う学問になっていったのではないかと思います。

だからぼくは、これは単なる修復の話ではなく、井戸尻の考古学や先人たちの考古学に対するスピリットを守っていくのか。重文指定と引き換えに美術工芸品として後世まで残るように修復するのか。そういった問題だとおもます。

副町長の答弁です。

重文は町民の誇りにもなる重要なことだと考える。ただし修復に関しては先人たちの意見を聞きながら進めていく。

藤森栄一氏は、諏訪湖に眠る曽根遺跡を浚渫工事から守り、旧御射山遺跡をビーナスラインから守りました
ぼくらは井戸尻遺跡の出土品を通して、藤森栄一氏や、一緒に発掘の携わった武藤雄六氏たちの精神を受け継いていかなければいけないと思います。

  文化財は正しく次代に継承されるべき社会遺産である。
  今われわれが壊していいとか悪いとかいうこととはちがう。

            〜 考古学とともに 藤森栄一 〜

国庫補助がつくまでに1年の猶予ができました。
次世代に残すべきものは何か。
きちんと精査し、慎重に進めていただきたいと思います。

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